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FLIER in Dark and Sensitive Room, Hours from Dawn to Dusk till Dawn

無断法要

  
  
  

生れ生れ生れ生れて生の始めに暗く、死に死に死に死んで死の終りに冥し。    


                                             空海~「秘蔵宝鑰」
  
  
  
  


4人の暗室仲間の話…

 E氏の勧めで連れてこられ、我々暗室仲間では新参と言えるA氏…
 彼の個人紹介を後回しにしたのは、僕が彼を新参だから蔑ろにしているとかそういった
事ではない。ある意味、計り知れないその奥深さに、元々僕がたじろいでいる面があり、
知り合って1年にはなるのだが、彼を前にすると僕は未だに自分の意識からスッと前に伸
びる金属探知機のようなものを感じてしまう。

 A氏だけにおいて、我々は2人固有の接点というものが全く無い。いつもE氏を入れて
3人か、または5人全員での飲み会の時に顔をあわせるだけなのだ。2人で飲みに行く事
も無ければ、電話やメールでコンタクトをとることさえ全く無い。

 ところが近頃、全員が顔をあわせるような飲み会の際、ほとんどの時間を、僕とA氏は
2人の世界で話ばかりしている。写真の話題が出る事は一切無い。そもそも彼の仕事上や
趣味において、写真絡みの考え方さえほとんど聞いた事が無い。ある旅行代理店が発行す
るフリーペーパーに載っていた…あるいはそのフリーペーパーに馴染まない見事な彼の
仕事を、一度見ただけである。もうそれだけで写真関係で彼と話す事なんて何も無かった。

 A氏の父親は寺の住職である。つまり彼は寺の長男なのだった。

 僕も交友関係はそこそこ広いように自分では考えていたが、この分野の人物はA氏が
初めてであり、彼にとってそれが起源となっているかどうか、詳しくは未だに判明して
いないのだが、我々の共通の話題は「空海」なのだった。

 そう、弘法大師の「空海」である。

 長い「空海」歴を持つ僕に真剣にかまってくれる友人が、20年目にして初めて出現
した訳だ。10歳近く年下で、しかもその余裕綽々の受け答えからして、僕の知らない
どれ程深いレベルで「空海」を理解してるのかも分からず、そしてどんな事においても
絶対に熱く語る事をしない彼は、計り知れない空気の持ち主だった。

 しかし僕の方は、そもそも歴史上の賢人として、また、言語哲学の大御所としての空海
にはまっているだけなので、この先どっち方向に話が向かおうとも、自分のスタンスに
自信を持ってるから心配は無い。

 そもそもA氏は今から約1年前8月の上旬に、我々全員を自分の実家の寺に呼びつけ、
M・ジャクソン氏の法要を無断で厳かに行ったという事件で、この仲間における立ち位置
を完璧に確立したのである。

 10歳年下の男子(と言っても30代半ばなのだが…)が、このくらい面白いと、
僕などはもう本当にうかうかしていられなく… 強すぎる刺激物なのだった。
 
 
 
無断法要_f0006218_1902392.jpg

「Persona」~ペルソナ


by flierone | 2010-06-23 19:02